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■ ティント・ブラス『鍵』 (1984 伊, 仏) ★★★
谷崎潤一郎の『鍵』です。ああ、もう、ここまでやっちゃってくれたら、なんも言えませんですよ。これまでにまごれびゅで、同じ『鍵』、神代辰巳監督/荒砂ゆき主演と、木俣堯喬監督/松尾嘉代主演をアップしてるけれど(肝心の市川崑監督 / 京マチ子はまだね)、なんて言うんでしょか、イタリアと日本とでは、こうもセックスに対する感覚がちがうのかという気がするのね。だから途中で、原作は原作だけど、これは谷崎の『鍵』じゃないと諦めた。するとけっこう楽しめるんだよね。だいたい、谷崎の陰翳また粘着質、ということなんかラテン民族に理解できるわけがない。光が違うんだから。 でも、そのねちーっとしたところ抜いたら、気の抜けたぬるいビールみたいで、だからなんも言えませんですよ。 こんだけラテンの開けっぴろげな映画であるのに、むかつくと言えば、《ヘア無修正ディレクターズカット版》であるのに関わらず、ボカシの多いこと。そこまでぼかすかぁ。ちまたにゃ薄ケシが氾濫してるというのに、白けるんだよなぁ。もうあきれ返ったのは、エゴン・シーレの贋作を取引する話が出てくるんだけど、そのエゴン・シーレの贋作にてぃんてぃんでも描かれていたのだろうか、ボカシ入ってんだぞ。オルセー美術館では、まんこが堂々と展示されてるってのに、あんなボカシ入れるのって、ロダンの抱擁に布を被せた時代と全く同じでしょ、恥ずかしくないのか。ティント・ブラスは「イタリアン・エロスの巨匠」なだけに、無難にボカシ入れておきたいのはわからないでもないけど。 さっぱりエロくなくて、感覚が決定的に違うんでしょ、コメディーだから。『スナックバー・ブダペスト』でも、そうだったけど、イタリアのファシズムをかなりのところでおちょくってるみたい。それとか、ベネチアの町の素人の人間がちらちらと登場する、ネオレアリズモの伝統を引き継いでいるんだろうか、エロい部分はおいといて、そういうところを見てるほうがずっとおもしろかった。スケベ期待したらダメです。
La Chiave / The Key 製作 ジョヴァンニ・ベルトルッチ 原作 谷崎潤一郎 監督・脚本 ジョヴァンニ・ティント・ブラス 撮影 シルヴァーノ・イッポリティ 音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 ステファニア・サンドレッリ / フランク・フィンレイ / フランコ・ブランチャロリ / バーバラ・クピスティ
2004年08月01日(日)
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