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 ジュゼッペ・トルナトーレ『ニュー・シネマ・パラダイス/完全オリジナル版』 (1989 伊, 仏) ★★★

もう10年以上前になりますか、『ニュー・シネマ・パラダイス』で泣けなければ、感性、疑うよとまで言われたのは。ごめんなぁ、泣けなかった。ボク、前から言うとるようにお子ちゃまモノは弱いのだよ。どうもお子ちゃまが前面に出てくると、退いて斜に見てしまう悪い癖がある。お子ちゃまが主人公になってるので、いかったぁって思ったのってほとんどないなぁ。『自転車泥棒』くらいか。
さて、お子ちゃま時代から、主として20過ぎあたりまで、それから話がボンと飛んで50くらい、とおおかた40年以上の時間を描いているので、主人公のサルバトーレ(=トト)なんかは3人がかりよ。順にサルヴァトーレ・カシオ、マルコ・レオナルディ、ジャック・ペラン。サルバトーレの母親はアントネラ・アッティーリ、プペラ・マッジオ。サルバトーレの恋人エレナはアニェーゼ・ナーノ、ブリジット・フォッセーといった具合。もっとも、もう一人の主人公アルフレッドはフィリップ・ノワレ一人ですが。最初の封切り版では、「その後のエレナ」はカットされてたので、ブリジット・フォッセーはなし。それと逆にこの完全オリジナル版では、エレナの娘がアニェーゼ・ナーノが二役(?)  なんてキャスティングだ。
結論から先に言うておくと、《完全オリジナル版》なんてものにロクなのがない。2時間過ぎてからが苦痛で苦痛で。がすっとトーンダウンよ。ゑっ、こんな話になったかって、をいをい長すぎるんだよ。いくら、トルナトーレ監督が、この映画のあとしばらくの間、古いイタリア映画の修復にかかってたからって、自分の映画も切り詰めたところをまたつなぎ合わせますか?
ラストでね、サルバトーレ監督がラッシュ室で、映画のキスシーンをつなぎ合わせたのを見て、自分で感動してんだけど、自分自身、つまり再会したサルバトーレとエレナの波止場に止めた車の中でのキスシーンって、あんなふうに映画史には決して残らないでしょう。でもこのラストはばっちグー!このあとの彼自身、修復作業に入ってしまう伏線というか、その思いはこの映画を作ってるときにあったんだね。
それはそれとして、トルナトーレ監督ってのはあざといなぁっていう印象は、このあとの『海の上のピアニスト』でも『マレーナ』でも思ったことで、よく言えば、心の琴線に触れる演出をやってのけるわけです。「子供の時に映写室を愛したように、自分のしていることを愛せ」って確かに名言だ。でもボクに言わせれば、語り過ぎだな。そこまで言うてもらわんでも、自分で生きてけますって。
それに、くどいんだよっ。たとえば、トトがおつかいをさぼって映画館に行き、母親(この母親のアントネラ・アッティーリ、覚めた艶っぽさがあってボクは好き)から50リラもなくしたと叱られるときに、アルフレッドが機転を利かせて映画館の中に落ちていたとする挿話なんて、もう鼻につく。そんなところで泣きをとられるほど感性がマヒしとらんって。あんな話いりません。それでもツボはしっかり心得ていらっしゃるから、タチが悪い。
トルナトーレ監督ってのはつくづく映画が好きなんだなぁ。映画館に集まる人間たちも、その演出はわざとらしく大仰なんだけれd,それはそれでいいと思うのね。それがツボなんだよ。「ここはオレの広場だ」と言い続けるオヤジの存在はなくてはならないでしょう。そんなふうに、《劇場封切り版》では、きっちりそのツボにはめられてしまい、夢は夢のままで終わってくれたもんね。
アルフレッド、エレナとの後日譚はまた別のところでやってくれたらよかったのに。夢の続きを見させられることは残酷だよな。
蛇足だけど、自転車にアルフレッドとトトが乗ってるポスターな、あれって日本だけ? どうもお子ちゃましていて、あのポスターもボクは退いてしまう。アップするのに、海外のサイトさがしてみたけど、あれはないよぉ。むしろ、若き頃のエレナとのキスシーンを出してるポスター(DVDのパッケージも)はある。どうも、日本ってとこはお子ちゃまを前に出したがる。やっぱりこの映画の、キーポイントはキスシーンでしょ。

NUOVO CINEMA PARADISO
監督・脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ
製作 フランコ・クリスタルディ
撮影 ブラスコ・ジュラート
編集 マリオ・モッラ
音楽 エンニオ・モリコーネ / アンドレア・モリコーネ
出演 フィリップ・ノワレ / ジャック・ペラン / サルヴァトーレ・カシオ / マルコ・レオナルディ / サルヴァトーレ / アニェーゼ・ナーノ / プペラ・マッジオ / レオポルド・トリエステ / アントネラ・アッティーリ / エンツォ・カナヴァレ / イサ・ダニエリ / レオ・グロッタ / タノ・チマローサ / ニコラ・ディ・ピント / ブリジット・フォッセー


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2004年07月04日(日)
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