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 是枝裕和『ワンダフルライフ』 (1999 日) ★★

 死後世界ファンタジーとでも言うておきましょう。
 死んだら、いきなり「あちら」に行くのでなくて、とりあえずは、その世界に入ってきます。ここで生前最も大切な思い出をひとつだけ選ぶことを強要されるのですね。そしてその思い出をひとつだけ抱いて安らかに「あちら」に行くそうです。そこには永遠の時間が約束されていると。
 そのシステムを、善意ととらえられるかどうか、これにかかってくるでしょう。ボクには、それは強要される善意の顔をしたおせっかいなシステムとしか見えなかった。へそまがり。。。。まぁ、そうとらえてしまうと元も子もないんだけどな、「きょうは月曜ですので水曜までにそれをひとつ決めて下さい」
 はん、ファンタジーとして見てる分には、まぁなんてんでしょ、とりあえずおもしろかった。「その世界」に死んできた人々は老若男女、意外とすなおにその突然の事実を受け入れて、必死にもっとも大切な思い出をさぐろうとする。強要されるということを横に置いておけば、最も大切な思い出をさぐるということには、それはそれでいいでしょう。ひとつだけということも少し気にはなるんだけれど、人が人生の意味をさぐろうとすることは無意味じゃない。人生に意味があるかどうかは別にしてな。
 ボクはね、そのさぐろうとする過程が大事であって、それがどうであってもいいと考える。そのことを手助けする谷啓やARATA、小田エリカたちの、実は成仏できない亡者達の行いもそれはそれでいい。ここまでが前半ね。それでここまでの部分のドキュメンタリっぽく描き出してるのも結構自然だった。ちこちこ気になるところもなきにしはあらずなんだけど、まぁいいや。
 さてその半亡者たちから聞きだした大切な思い出をどうするかっていうと、再現して、つまり撮影して、それを上映する。半亡者たちはその思い出が再現され、感極まったところで「あちら」に行く。ここらあたりから、気持ち悪くなってくる。もう最悪だな。善意の撮影クルーが前面に出てきて、迷っていた半亡者達もにこやかな顔になってくる。ごんごん善意が突出してくるんだよね。とくに老婆2人の悟りきったようなにこやかな表情ってのが、それまでドキュメンタリーっぽく作られていただけに、なおさらのこと作り物としての表情が際立ってくる。この撮影シーンのしつこさったらなかった。例えば、飛行機から見た雲だとか、チンチン電車だとか、なんで撮影クルーも半亡者たちもこんなにも真剣になれるのか。そのような大切な思い出を、作り物で再現されて成仏できる、成仏させられるという神経に吐き気を催す。
 そんな中で、ARATAと内藤武敏、小田エリカの成仏することとはほど遠い人間臭い関係を描き出そうとしたところでもうすでに終わってしまっていた。
 

Secrets & Lies
監督・脚本 是枝裕和
プロデューサー 佐藤志保 / 秋枝正幸
企画 安田匡裕
撮影 山崎裕
美術: 磯見俊裕
郡司英雄
音楽 笠松泰洋
出演 ARATA / 小田エリカ / 寺島進 / 内藤剛志 / 谷啓 / 伊勢谷友介 / 由利徹 / 白川和子 / 吉野紗香 / 志賀廣太郎 / 内藤武敏 / 香川京子



2003年12月25日(木)
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