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 ピーター・グリーナウェイ『コックと泥棒、その妻と愛人』 (1989 英, 仏)


 結局のところグリーナウェイってのは、これに始まり、これに終わるってんでしょうか。
 話はいたって単純明快。この単純なのがいいねぇ。泥棒シンジケートのボス・アルバート(マイケル・ガンボン)は稼ぎでレストランを乗っ取ってしまって、そこを根城に毎晩毎晩、その妻ジョージーナ(ヘレン・ミレン)や手下どもを引き連れて、やりたい邦題のグルメに耽る。ただのグルメでは飽き足らず、究極のグルメはゲテ物食いなのである。あまりの荒唐無稽に嫌気をさしたジョージーナは、店の常連マイケル(アラン・ハワード)とメイクラブ。食事の合間に、泥棒の目を盗んで(泥棒の目を盗むんだからたいした女だわ)、トイレや厨房ではめまくりーぬ。そんなのがばれないわけがなく、泥棒の妻を盗んで(泥棒の妻を盗むのだからこいつも悪玉だ)、二人で駆け落ちするも、見つけ出されてマイケルは蔵書をしこたま食わされて殺される。そうして愛人を殺されたその妻は復讐に燃えるのであった。。。
 なっ、なっ、単純だろうが。この単純なストーリーに乗っかって、豪華絢爛なるグリーナウェイ・ワールドが展開される。見どころはそこんところで、ストーリーなんてどうでもよろし。字幕、一生懸命読む必要もないくらいなんだが、字幕なんか読まなくても話はわかる。が、字幕でさえも悪口罵詈雑言のオンパレード。これ、字幕でなくて、実際にことばが聞き取れるのなら、おもしろさ10倍なんだろうな。きっと4letters word のオンパレードだって。もちろんグリーナウェイといったらシンメトリーってくらいの映像バリバリ。グリーナウェイの場合、しつこいくらいのシンメトリーで、いい加減うんざりもしてくるのだけれど、この『コックと泥棒〜』では、それが適度なさじ加減がよろし。それもよりも心地よいのがカメラがずっとパンしていって場面ががらっと変わる。この変化がたまらなくいい。グリーナウェイがはまりまくっているというバロックの室内から一転、非常に無機的な室内への切り替わりはそれは見事。その変化に合わせるように、ナイマンの音楽がどんぴしゃ。そしてそのゲテモノ趣味にずばっとはまるゴルチエの衣装。美術、音楽、衣装、それぞれの相乗効果で究極のラストに突っ走っていくさまは、文化こそちがえ、これはどこか寺山修司にも通じるなと。もちろん寺山のようなセンチメンタリズムはありませんで、あくまでもドライに、そして痛烈な批判精神はグリーナウェイならではのこと。
 ア丶、オモシロカツタ。。。。ん?肝心のコック(リシャール・ボーランジェ)は?

The Cook, the Thief, His Wife & Her Lover
製作 キース・カサンダー
監督 ピーター・グリーナウェイ
脚本 ピーター・グリーナウェイ
撮影 サッシャ・ビエルニー
美術 ベン・ベン・オス / ヤン・ロールフス
音楽 マイケル・ナイマン
衣装 ジャン・ポール・ゴルチエ
出演 リシャール・ボーランジェ / マイケル・ガンボン / ヘレン・ミレン / アラン・ハワード / イアン・デューリー / ティム・ロス
★★★★☆



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2003年06月10日(火)
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