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 ▼ ジャン=リュック・ゴダール『恋人のいる時間』(1964 仏)

▼ ジャン=リュック・ゴダール『恋人のいる時間』(1964 仏)

 あら、これって1964年、つまり37年前に日本で公開されてから以降、国内でまったく公開されてなかったのネ。いま、allcinema ONLINEも、CinemaScapeも見たけれど、ゴダールの作品にリストアップされとらへんの。
 ボクはこれをまだ中坊だった頃にテレビで予告編を見て、むちゃくちゃそそられた。37年前のことです(^_^ゞ それ以降、ずっと見たくて見たくてたまらなかったんだけど、そうか、全く公開されてなかったのか。なんででしょうね、埋もれてしまったのは。別にとくにエロいというわけでもないのに。ビデオすら出てないみたいなんよね。
 というわけで、今回やっとのことで見れた。すごいもんだね、37年にもなるというのに、刷り込まれた記憶というのは。いろいろ映画を見ていても全く覚えてない映画すらいっぱいあるというのに、予告編だよ、確か。あるいはいくつかのシーンだけ取りだした数分のことだったのに。
 真っ白なシーツをぱっとめくると、裸の女と男の足がからみあっている。女がシーツをかけて隠す。すると男がまたシーツをめくって足をあらわにする。あるいは女の腹(ヘア寸前)に置かれた手によって女の肉体そのものがうごめく。鮮烈です。いまこれくらいにポルノが氾濫している時代にあっても、それ以上に鮮烈。ボク自身のセックス感はひょっとしてこの映画でできてしまったんじゃないかと思えるくらい。そして何よりも、冒頭とラストでちょうど反対の動きをするんだけれど、真っ白なシーツの上での手だけのセックス。これは、ボクにとっては死ぬまで忘れられない最高のセックス描写だと、きょう見て確信したよ。
 副題に『1964年に撮影された、ある主婦の1日の断片』とあるように、シャルロット(マーシャ・メリル)の愛人ロベール(ベルナール・ノエル)、また夫ピエール(フィリップ・ルロワ)との24時間を切り取って見せる。まさに切り取って見せたというのは、セックス・シーンに限らず、肉体の部分だけを超どアップされる。そのパーツが、ゴダールお決まりのことばの洪水より以上に語る。「目は口ほどにものを言い」どころか「目は口以上にものを言い」なのだ。そこにささやくような単語が重なってくると、もう鬼に金棒的。どんどんイメージは膨らまされて行く。
 なんかこうして書いていると、そういう肉体のパーツばかりの映画かいなと思えるんだが、実際に始まって10分ほどはそうした1カットの連続で、ひょっとしてこのまま突っ走るのかしらなんて思いもしたんだけれど、そこはいつものゴダールもしっかり現れる。例えばdangerとかね、言葉遊び。フランス語がわかっていればほんとのところもっともっと楽しめるはず。セーヌの河畔をロベールの車で走ってるときにエッフェル塔が借景されていたり、車のフロントガラスの部分だけ曇って切り取られてたり、シルビー・バルタンの歌(『悲しきスクリーン』ってのがまた粋)がバックで雑誌の下着広告が次々に現れて、それがトリンプ(下着メーカー)のボードビルにすりかわって、その前にマーシャ・メリルが立っていたりとか。見ていて楽しくてしかたなかった。
 《1追憶》《2現在》《3知性》《4幼年期》といったゴダールお約束のディスカッションじゃ、《2現在》をシャルロットにもたせ、《1追憶》を夫のピエールにもたせるのには思わず苦笑いしてしまった。だっていろいろ「恋人のいた時間」を《追憶》してしまってたんだもん(^_^ゞ


Une Femme mariee
監督 ジャン=リュック・ゴダール
撮影 ラウル・クタール
出演 マーシャ・メリル / ベルナール・ノエル / フィリップ・ルロワ / リタ・メダン
★★★★★



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2002年12月03日(火)
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