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■ ▼ 神代辰巳『噛む女』(1988 日)
 日活ロマンポルノがおしまいになってロッポニカとなっての第1作。もうすでにこの頃には神代監督はその筋では巨匠になっていたんだな。 ストーリー知りたければこちら。がつぅ〜〜んと身につまされるというべきか(苦笑)、あるんだわ、夫婦二人して別に別れたってかまわないと思っていることなんて。そんな別れても構わないと考えたことのない夫婦関係なんてウソだと、これ見てもやっぱり思っているけどね、ボディブローのようにずしーんとこたえる(-。-;) 何がどうってことのない、ごくありふれたシーンを繋ぎあわせていくだけなのに、ずしーんと効いてくる。それが今の若い人たちから見ると「暗いっ!」の一言で片づけられてしまうものかもしれない。だが、まるでジグソーパズルのようになかなか見つからなかった1ピースがぽこっとはまってしまい、がしっと自分のからだの中に収まってしまうような。具体的にどうこう言えなくてごめんね。神代の作品を若いときからいくつも見てきて、そのたびに、ボクのからだ、感性の説明のしようのない部分にはまっていく。自分自身がそのように組み立てられていたんだから誰に文句の言いようもない。 もうちょっと作品そのものについて話してみると、神代監督というのは《「こうしろ、ああしろ」じゃなくて「ちょっとやってみて」(Studio Voice 97/11)》と演出していくらしい。そこでこの『噛む女』で、あっと思ってしまったのが、桃井かおりが階段を上がりながら右手を上に向けて親指で鼻の頭を押さえるシーン。この所作については、たぶんいろいろな演ってみたんだろうな、「ちょっとやってみて」と。そこでひょこりと出てきたのがこの所作、「をっ、それいい、それで行こ!」だったんだろうな。あらかじめ考えて出てくるような所作じゃない。はい、別にぼーっと見てたら、その直前の電話のシーンが壮絶なだけに、見過ごしてしまうシーンだよ。だから、だからなんだよね、ボクはその直前のシーンが壮絶であっただけに、そしてあらかじめ仕組まれた演出でなかった(だろう)から、余計にこのシーンでぱこっとジグソーの1ピースがはまるのを感じてしまった。 そのあとにクリムトってのもでき過ぎと言えばでき過ぎだけれど、このクリムトにもはっとさせられる。そういう小技でいうと、永島敏行がひとり寝転がってみる映画が『晩春』であったり、『恋人たちは濡れた』であったり、かつての70年代の学生運動のドキュメントであったり、そいう小技を使っていてもイヤミにならないのがすでに巨匠であったからかもしれない。
製作 山田耕大 監督 神代辰巳 脚本 荒井晴彦 原作 結城昌治 撮影 篠田昇 美術 菊川芳江 音楽 小六禮次郎 出演 桃井かおり / 永島敏行 / 平田満 / 余貴美子 / 竹中直人 / 戸川純
★★★★★
2002年10月05日(土)
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