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 ▼ エリック・ロメール『獅子座』 (1959 仏)


 まさにきょうはボクの誕生日で、まさに獅子座だから、きょうにとっておいたというわけでもない。同じロメールできょうのためにとっとくんだったら他にもっとラブラブなんがあるわけで、これはひたすら堕ちていく話だからねぇ。ん? ぴったりだってか(^_^ゞ

 叔母が死んでその莫大な遺産が入ると、ピエール(ジェス・ハーン)は大騒ぎ、友だち集めて飲めや、歌えの大騒ぎ。で、世の常として、このあと話はどう展開するかは見え透いて、その通りに、遺産は一銭も入らん、あ、いや1フランもです。(しょもないツッコミ自分で入れないように)
 おまけに住んでいたアパートは別の事情で出ていかなくてはアカンようになるし、ここから踏んだり蹴ったりの展開が始まる。カウリスマキばりの不幸物語の始まり、始まり。頼りにしてた友だちはみんな仕事で南アフリカに出張だとか、バカンスだとかで、いっせいにおらんようになる。アパートを出てしまったピエールはまだ遺産をあてにしてホテルに滞在。が、これもホテル代払えないと踏み倒して、より安いホテルに。それでも持っていた本を、かの観光名所シテ島の路上古本屋に売り飛ばして、飯代を作るまではよかった。店で買ったオイルサーディンの缶をあけるときに油を飛ばしてズボンに染みをべっとり。そんなんじゃ女に会えないと薬局で染み抜き80Fを買うと、もうほとんど金は残らない。当然のことながえあそんな染み抜きなどは役に立たなくてセーヌにポイ。ついにはそのホテルもついには追いだされる始末。
 やっとのことで悪友に会って、売人でもやるかと世話してもらうんだけれど、その売人の元締めのいるパリ郊外までの切符を30Fで買うてやると残るは6F。ところがその切符さえ落としてしまって、さぁこっからが圧巻。延々ピエールは歩きだすのですよ。このピエールのお徒歩が延々と続く。なんてしつこいんだと思わせるくらいしつこい。その間、ほとんどセリフなんかなくて、とにかく歩く。しまいには靴が口を開けてしまって、それを布切れで縛ってまでも歩く。ピエールに歩かせておいてパリの街を克明に描いていく。実はロメールの描きたかったのはパリという街の生き様を描きたかったのだよ。この手法がまさにヌーベルバーグそのものなんだよねぇ、脱帽します。そしてピエールに「なんて猥雑な街なのだ、汚らわしいパリ」と罵らせる。セーヌに架かる石の橋で、「なんて汚い石(石のことをフランス語で「ピエール」)なんだ」と。パリという街、自分自身を罵らせる。並の堕落譚に終わらせてしまわないのがすごすぎる。
 こんだけ堕してこのあとどうまとめるんだろって心配するほどまで堕して、あっけらかんと終わらせてしまう。これこそフランス映画、ヌーベルバ−グ。
 ん? 獅子座、気位が高いんです、ボクも。

Le Signe Du Lion
製作 ロラン・ノナン
監督・ 脚本 エリック・ロメール
撮影 ニコラ・エイエ
音楽 ルイ・サゲール
出演 ジェス・ハーン / ミシェル・ジラルドン / ステファーヌ・オードラン / ジャン・リュック・ゴダール
★★★★★




2002年08月17日(土)
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