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■ ▼ スティーブン・ソダーバーグ『KAFKA 迷宮の悪夢』 (91 米)
 大学生だったころに「カフカ全集」なんてアホなシャレを言うとりました。つまり成績は可と不可ばっかり。ついでに蛇足ですが、ボクの本名は「か」で始まるんですが、その頭文字をとって「K」としてたこともあった。にゃははは、カフカの「K」なのでもありますが。 カフカのようでカフカでない。まさに可不可。ソダバーグによる『城』へのオマージュというのはよくわかります。が、カフカは「Why?」という問いかけに答えはないです。何故だかわからないけれど、「城」の中に入り込んでしまっていた。虫に「変身」してしまっていた。どういうわけだか「審判」にかけられていた。「城」の中でカフカがムルナウ博士に「why?」と聞きましたね。そしてムルナウ博士は明確になんだかんだと答えてしまいました。 カフカはホラーでもサスペンスでもない。だからこそ怖い。ほんとに怖い。このわくわくするようなプラハの町の映像の中でどうして突然奇声を発して怪物のような男が襲いかかってくるのだい。うんざり。カフカの周囲の人間が謎の死を遂げる。それは殺人であることを最初に明示してますね。最後にそれは「自殺だ」と片づける刑事に「自殺だ」と答えるカフカは正しい。が、その殺人の謎を解くという明確な意志をもって「城」に入っていくのはアメリカ映画でしょう。 でも、いかにもいかにもカフカ的登場人物をあちこちに配して十分楽しませていただきました。が、双子の兄弟はねぇ、そんなのカフカのどっかにあったんかいねぇ。その出はよかったんよ。が、あの上滑りのくどさはアメリカ映画。白けました。 まぁ、とにかくせっかくのプラハの背景とジェレミー・アイアンズの渋さをホラーとサスペンスで味付けしてくれて、とにかく「城」へ入って行った。その「城」の中の抜け口。ぎっしり引き出しが並んだ部屋に出てきたのにはホッとした。って、よく考えてみれば、オーソン・ウェルズのパクリじゃんか。そこで墨絵のようなモノクロ映像(この映像は好きなんだけどね)からカラーに変わったときには正直ホッとした。あれ以上、ホラーでぶっ壊してほしくなかったから。が、そこからがいけない。アメリカ映画だぁぁ。でも脳内が映しだされた円天井裏が目玉に変わって、十分楽しませていただきましたけどね。SFじゃない!っつうの。ムルナウ博士の助手が目玉に向かって落ちていくのは、むちゃかっこいい。が、カフカじゃない。ムルナウ博士がぎりぎりとつり上がっていく。カフカではございません。 もう一度、プラハの墨絵の世界に戻って、ほんとにほんとにホッとした。思うにカフカだなぁと思えたのはこのラスト5分、もっと言うと「自殺だ」というジェレミー・アイアンズのセリフにだけカフカを見た。カフカを外してくれたら3倍は楽しめたのにな。嫌いじゃないけど、好きじゃない。
Kafka 監督 スティーブン・ソダーバーグ 脚本 レム・ドブス 撮影 ウォルト・ロイド 美術 ギャビン・ボクエット 音楽 クリフ・マルティネス 出演 ジェレミー・アイアンズ / テレサ・ラッセル / アレック・ギネス / イアン・ホルム / アーミン・ミューラー・スタール / ジョエル・グレイ / ジェローン・クラッベ
★★★
2002年05月09日(木)
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