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■ ▼ ヘクトール・バベンコ『蜘蛛女のキス』 (85 米,ブラジル)
 これってたぶんきっといい映画なんだろううね。頭の導入の仕方からしていいもんねぇ。一瞬、何が始まるんだろうと。ハッと気がつけば、全くかけ離れた牢獄の中。そしてそこにいるのが、反政府組織の活動家バレンティン(ラウル・ジュリア)と、ホモセクシャリスト=モリーナ(ウィリアム・ハート)という組み合わせが非現実的なのもいい。早い話がこの映画通してほとんど舞台となるのは二人が収監されている牢獄の中の話。下手すれば退屈極まりなくなるところが、この二人がまたいいと来てるんだから文句のつけようがない。もう語り尽くされてるけれど、とくにウィリアム・ハート。ぱっと見には男、よく見りゃ少しだけ女、でもやっぱり見た目に男。でもハートのハートの芯までぞっこん女、女以上に女。そういうキャラをよくぞ出すことができるとは涙モン。 さらにさらに、閉塞された牢獄から外界に飛ばす、その方法がすごくいい。この牢獄の中で退屈しのぎにモリーナが作りだす映画(劇中劇)が、この出し方が心憎いんだよね。小出し、小出しにして。そしてこの二人の運命の伏線ともなって、緻密に計算されてるなあと。この原作というのが、「」つきのしゃべり言葉ばかりで構成されていて、そこから脚本に落とすのも大変だったとか、どこだったかに書かれてた。まさに脚本の勝利だね。そしてバレンティンの回想、もうひとつの映画、これら3つの外界の話、実は二人の頭の中なんだけれど、それに登場する3人の女をソニア・ブラガで繋ぎあわせてしまう。もうこれって反則技ですよ(^_^;アハハ…
と、ベタ褒めなんだけれど、だからといって、いまいち乗りきれない。観ていて退屈なんかしない、おもしろい、ぐっと来る、なのにはまって行けない。それはやっぱり閉塞感、絶望感、結局のところ、二人して頭の中へ逃避していく(とは言いたくないんだけど)戻っていくしかなかったし、戻るしかないんだなというのがずっと見えていることが哀しすぎるからなのだ。
Kiss of the Spider Woman 監督 ヘクトール・バベンコ 脚本 レナード・シュレイダー 原作 マヌエル・プイグ 撮影 ロドルフォ・サンチェス 音楽 ジョン・ネシュリング 出演 ウィリアム・ハート / ラウル・ジュリア / ソニア・ブラガ / ホセ・リュウゴイ
★★★★
2002年05月04日(土)
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